部長はどこだろう。

製造部の根岸部長は工場の責任者でもあって、三課を見回りしていることが多いため、見つけるのが一苦労。
歩き回って溜め息を吐いた時、話し声が聞こえた。

「あいかわらず宮内くんの設計は評判良いよね」
「そうですか?」
「あの大手からご指名で依頼がくるんだから、大したものだよ。社長も絶賛してたよ」
「ありがとうございます」
「そうそう、君も今度どう?たまには社長のご機嫌取りしないと」
「いやー俺、酒弱いんですよ」

……宮内部長、捕まってるのかな。
話好きで中高年の臭いがちょっとキツイ根岸部長。
私も一時間捕まって、白坂先輩に怒られたことがある。

ササッと渡して帰ろう。

「あ、あの。お話し中すみません」
「ん?君は新入社員の、えーと」
「田代です。根岸部長、書類を届けに……」
「そうだ田代ちゃん!若くて羨ましいなぁ。いくつだっけ?」
「22歳です。あの、書類を」
「そうかぁ、じゃ君も今度一緒に。たまには若い子に接待されたいなぁ」
「えっ?」

トントンと私の肩を叩きながら、何のことやら話が始まってしまった。

とにかく書類をもらってほしい。
申し訳ないけれど臭いに耐えかねます。