オフィスへ戻るとすぐに、白坂先輩に呼び止められる。

「田代さん、そういえば倉庫の電気切れてたのよ」
「あ、じゃあ交換してきますね」
「よろしく。あとついでにコピー用紙も」
「わかりました」


倉庫の中へ入ると案の定冷たい空気に包まれて、背中がゾクリとした。
明かりがないと真っ暗で開けたままの扉から入る光が唯一の頼り。
ガタガタと脚立に登り、新しい電気と交換する。
理屈はわかっているのだが、取り外せても手元が見えずなかなか取り付けができない。

「痺れてきた……」

重心が左右に振られ悪戦苦闘していると、工場から出てきたらしい佐々木先輩が駆け寄ってきた。

「田代さん!?なにしてんの危ないよ」
「あ。おかまいなく」
「電気交換?やってあげるよ」
「このくらい私の仕事ですから!」
「いやでも、凄いフラフラして……」

佐々木先輩が脚立を押さえてくれて、持ち直したところで今度は宮内部長が顔を出す。

「なに騒いでるんだ?」

「あっ部長、きゃぁっ!?」
「田代さん!」

部長に気を取られ、ガシャンと大きな音を立てて崩れ落ちたのは佐々木先輩の腕の中。

「す、すみませんっ!怪我してませんか!?」
「田代さんこそ大丈夫?」
「私はどこも……」

慌てて立ち上がろうとしてよろめいていると、部長に腕を引き上げられた。

「大丈夫か?田代」
「……司、俺は?」
「お前は自慢の筋肉で守られてるだろ」
「酷いなぁ。田代さん、電気やっとくからね」
「あ、ありがとうございます」

「田代、本当に怪我してない?」
「はい。でも佐々木先輩は……」
「俺も大丈夫だから、気にしないで」
「良かった……」
「そうだ!なにかあったら田代さんに手取り足取り看病してもらおっかな~」
「こら大介、田代をからかうなって」

「はいっ!」

「「え?」」
「まかせてください!」

私は真剣に答えたのに、宮内部長は顔を引きつらせ佐々木先輩は大笑い。
わけがわからず恥ずかしくなってきて、お礼を言うとコピー用紙を一箱持って飛び出した。