アパートに着き、呼べば微妙に反応する部長をベッドへ誘導。
私なんかの布団で申し訳ないけれど、床で寝るよりはいいよね?

六帖の部屋の割合を一番占めるベッドへ。
必要な物しかないから散らかりようがないのだけれど、やっぱり気になって小さなテーブルの上をサッと片付けた。

部長は目を閉じたままパタパタと服を扇ぐ。

「あちー」
「何か飲みますか?」
「パン」
「え」

……ムリだと思います。

「部長、お水どうぞ」
「……」
「大丈夫ですか?」
「うん」

飲み干した空のコップを受け取ると、不意に私の手を取り額に当てた。

「気持ちいいー」
「あ、きっとコップ持ってたから……」
「なんか美琴、美味そうな匂いがする」
「……ふふっ、私はパンじゃないですよ?」

よいどれ部長にクスクスと笑いが込み上げる。

「宮内部長、忙しいのにいつも迷惑かけてごめんなさい」
「……」

寝ちゃったかな……?

部長はずっと優しいのに、時々胸が痛いのはなぜだと思いますか?

もし今あなたが目覚めたら、私はきっと嬉しくて、その目を見つめて微笑みかける。
自分ではよくわからなくて、困っているこの気持ちを相談できる。
俯いてばかりだった私を変えてくれた、初めて心を開けた人は。

私にはとても手の届かない、素敵な人。



「ふぁ~」

私もお酒は強くないみたい。
頭がボーッとして、変なことばかり考えてる。
虚ろなまま、染みて気持ち悪かった服を脱ぎベタベタの頭をシャワーで洗い流した。

宮内部長の眠るベッドの隣に腰を下ろし、カーペットの上にコロンと寝転ぶ。
近くのクッションを抱き締めるとすぐに睡魔に襲われた。

外し忘れた眼鏡が邪魔で、手探りで投げ捨て眠りに落ちた。