「おはよー」
「あっ、おはようごさいます」


今日も一番早いのは、設計部の部長の宮内司さん。

私なんかにも笑顔で挨拶してくれるし、たまに掃除を手伝ってくれたりする優しい上司。
仕事もできるし面倒見も良くて、オフィスの中でも抜群に人望の厚い人。
確か30歳だったかな、もっと若く見えるけれど。
容姿と性格の良さから、女性社員の話題にも登場しているのをよく耳にしていた。


8時30分になると、始業開始。


小さな会社といっても、取引先は大手企業。

私は総務部の事務という名の、主に雑用係だけれど、技術者さんや他の人達はバリバリ働いている。
依頼された精密機器の設計をし、それを別塔の工場で製造している会社。

工場と聞いて町工場を想像していた田舎者の私は、コンピュータで操る宇宙探査機のような機械と綺麗すぎる社内に入社当初はかなり驚いた。


「田代さん聞いてるの?」
「はっ、はい。すみません」

いつも怒られている私を遠目に眺める隣の営業部と、さらにその奥から憐れんだ目で眺める設計部の皆さん。
せめて別々のオフィスだと良かったのに。
「うわーまた始まったよ」と、どこからか溜め息が聞こえた。

……仕事の邪魔してごめんなさい。