21時になると歓迎会は解散になった。

「宮内部長~!二次会行きましょうよ!」
「やめろっ、揺らすな!つーか触るな」

何事もなかったように白坂先輩は部長の腕に絡み、ぐいぐい引っ張る。
口では迷惑そうに言うのだれど、振り払おうとしないことになぜかムカッとして。
でも立ち上がろうとしないことにホッとする。
というか動く気すらない……?

「私お持ち帰りオッケーですからぁ」
「アハハ!理子ストレートすぎ!」

「勘弁してくれ……」

白坂先輩なら逆にお持ち帰りしそう。
頭を抱えて溜め息を吐く部長のところへ、社長がやってきた。

「こらこら、君たちは二次会楽しんできなさい。幹事長に少し渡しておいたから」
「さすが社長~!太っ腹!」
「根岸部長はいなくてもいいんだけどね~!」
「アハハハ」

皆さんとても陽気。
今日はお酒の恐ろしさを初めて目の当たりにした。
二次会という未知の世界は、私には縁がなさそうだ。

「今まで宮内くんがこんなに飲むことなかったんだけどなぁ」
「……俺も色々あるんですよ」
「ははは。さて、宮内くんのことは、田代さんよろしく」
「えっ!?」
「適任だと思うんだが」
「……?」
「じゃ、僕はここで。これからも頑張って」
「はい。頑張ります」

社長はトントンと肩を叩き、今朝のように笑いながら帰っていく。
部長を心配していた佐々木先輩も、田代さんなら安心だと二次会へ向かった。

そっか……!
いつもお世話になってるし、こういう時くらい役に立たないと。

「……大丈夫ですか?」
「あぁ、悪い。代行頼んでくれ」

お店の人に電話してもらい確認すると、三十分くらいで来れるそう。
部長はダルそうに椅子にもたれていた。
お酒弱いって言ってたのに、無理して飲むなんて……。
毎日残業して、疲れも溜まっているんだろうな。

項垂れる部長の顔をよく見ると、ほんのり頬が染まっていた。



「部長、代行さん来ましたよ」
「サンキュ」

フラフラと歩く部長が心配で、支えながらなんとか乗り込む。
しかしその後、何度呼びかけても無反応。

「部長!起きてくださいっ、お家どこですか!?」

部長の家なんて知らないし!
代行さんの早くしろオーラを感じるよ……。

「部長!宮内部長ーっ!」
「……ぐぅ」

……ダメだ。

私は仕方なく自分の家の住所を告げた。