「あっ!司、どこに行ったのかと思えば……。田代さんに絡んでたな」
「絡んでねーって」
「いやそれ、めっちゃ説教してる感じだろ!」
「してねーよ」

……端から見ればそうかも?
ソファーにどっかりと座り足を組んだ部長。
その前で私がピシッと直立していたからなおさら、偉そうで。

「ごめんね田代さん。大丈夫だった?」
「あ、いえ、私は別に……」

「これが本来の俺だ」

「んなの俺くらいしか知らないだろーが。皆冷や汗かいてたっつの!フォローすんの大変だったぞ!」
「……悪い」
「今日ちょっと飲みすぎ。疲れてんのか?まぁ、部長サマも大変だろーけど」
「別にそんなんじゃ……」
「司は普段から我慢しすぎなんだよな」

あぁ、なんとなくわかるかも。
周りからすれば頼りになる良い人だけれど、本人にかかる負担は相当なものだと思う。
お疲れ様です、宮内部長。

「あれ、田代さん垂れてきてるよ」
「えっ?」
「なんか災難だったね……」

ちゃんと拭いたつもりだったのだけれど。
額に垂れてきた滴を眼鏡を外してゴシゴシ拭う。
すると突然、佐々木先輩が私の両頬を鷲掴んだ。

「ひっ!?」
「……か、かわいいっ!」
「っ!?」
「田代さん、眼鏡しないほうが良いよ!」

いえ、眼鏡しないと何も見えませんから。
そんなことより離してほしい。
ボヤけてよく見えないから余計、佐々木先輩の勢いが怖い……。

ドンッ

「っ、てぇ!なんだよ司」
「困ってたから助けたんだよ」
「酷いな!」

部長が佐々木先輩を思いっきり蹴り飛ばし、解放された私は即座に眼鏡をかける。
二歩ほど後ろへ下がると、立ち上がった部長にぶつかった。

「あっ、すみませ……」
「戻るか」
「……はい」



はっ!

私っ、人生で初めて男の人に……。
この短時間に二回も、二回も!
か、か、可愛いと言われた。

お酒の力って恐ろしいです。