ランチを早めに済ませ誰もいないオフィスで始末書に取りかかる。
白坂先輩には適当でいいからと言われたものの、要領の悪い私はPCのワードを開いたまま白紙の画面と睨めっこ。

初めてやったとか、眠かったとか、急いでいたとか、先輩のチェックが入ると思い安心していたとか、無責任な言い訳が頭の中をぐるぐると巡り自分が恥ずかしくなる。

なんでもっとしっかり確認しなかったんだろうと、過去の自分に重い溜め息を吐いた。
本当ダメだなぁ、私。

「田代」
「えっ?」
「反省も大事だけど、田代は切り替えも大事だな」
「宮内部長っ」

いつの間に現れたのか、驚く私をクスリと笑った部長は、隣の白坂先輩のデスクから椅子をガラガラと引いてきて座る。

「書き方わかるのか?」
「……いえ、実はよくわからなくて」
「よし。コツを教えてやろう」
「でも私なんかに……」
「田代は真面目だし素直にずっと頑張ってたじゃないか。やる気もあって努力してる人を一度のミスくらいで潰したくないなぁ」

宮内部長……、私のことそんなふうに思ってくれていたんだ。

「ほら。んじゃまず……」
「あっ、はい。よろしくお願いします」



部長は要点を絞って、ミスの経過、反省、対策の書き方や注意点をわかりやすく教えてくれた。

「こういうのばかりに時間かけていられないからな、テンプレ作って保存しとくといいぞ」
「ありがとうございました」
「ま、発注ミスは俺もやらかしたことがある。部品だったから単価も高額でさ、さすがに社長から厳重注意だった。……というか誰にでも有り得ることだから」
「……」
「田代も今回のことを糧にすればいい」
「……はい。頑張ります」

頷くとガシガシと私の頭を掻き回し、満足そうに微笑む。

「パン、また楽しみにしてるからなー」
「……っ!」


どうしよう。
さっきまで落ち込んでいたはずなのに。

宮内部長の優しさに、溺れてしまいそうです。