ホームベーカリーから取り出し、生地のガス抜きをしてベンチタイム。
その間に髪を乾かすのがいつもの流れ。

具を詰めて形を作ったら、二次発酵は冷蔵庫で一晩。
これでパンの準備は完了。
私も明日の準備をして眠りに就く。

会社のことで落ち込んでいても、パンの焼き上がりを考えるだけで、少しわくわくに変わるのだ。



翌朝は、6時起床。
オーブンを180度に余熱して18分。

「うん、いい感じ」

いい匂いが部屋を包み込み、私の一日が始まる。
冷めたパンを袋に詰めて、水筒に紅茶を入れいざ出勤。

タイミングを逃さないように、満員電車にドキドキしながら乗り込む。
ぎゅうぎゅうに押し潰されながら、混じり合った独特の臭いに頭痛がしてくる30分後、やっと解放されて外へ駆け抜ける。

そうして最大の難所へタイムカードを通す。

「はぁ、良かった。無事に着いた……」

ここまで来るのにすでにボロボロ。
でもこれから朝の掃除をしなくては。
ずれた眼鏡を直してほうきを持った。

十五人ほどが机を並べるこのオフィスは、事務の人が掃除をするらしい。
今年、新入社員で入ったのは私だけだから。
先輩から皆が出勤する前に掃除を終わらせておくよう言われた。