お昼になろうとしている頃、昨日発注した備品も無事に届き倉庫を整理していたのだが。
突然、白坂先輩が悲鳴を上げた。

「田代さん……!これ、どういうこと!?」

見ると異様な数のダンボール。
慌ててファックスした注文書を見直すと、数量1でいいところを12と記入してある。

完璧に私の入力ミス。

真っ青になって固まっていると、白坂先輩は大きな溜め息を吐いた。

「すみませんっ、私……」
「もうっ!……あっ」

先輩は工場から出てきた宮内部長を見つけて駆け寄る。
取り残された私は倉庫内の冷えた空気とミスを犯した責任感に苛まれ、立ち尽くしたまま震える手を握り締めた。

「宮内部長っ!聞いてくださいよ」
「なにかあったのか?」
「田代さんが発注ミスを出して……、私もうフォローしきれません」

話を聞いた部長は私に問いかけた。

「発注ミス?」
「……入力数を間違えてしまって」
「んー、田代が一人でやったの?」
「はい。白坂先輩はきちんと教えてくれたので、私の責任です」
「本当に?」
「本当です。私がしっかり確認しなかったんです……」
「そうですよ!田代さんが抜けてるんです」
「そうか。田代、故意でなくてもキー操作を誤ることはあるものだから。最後まで気を引き締めて、必ずダブルチェックするように」
「はい」

自分から「発注教えてください」と言っておいて、ミスするなんて……。
頑張ろうと思ったのに、また空回り。

「でも、白坂にも責任はあるぞ。指導係なら後輩の仕事は確認しないといけないよな?」
「それはっ……」
「一番はミスしないことだけど、失敗してからの対応も先輩として教えてやって?」
「……はーい」

宮内部長は厳しい顔つきでそれだけ言い、「よろしく」と白坂先輩にふわりと微笑み去っていった。


「あんたのせいで私まで怒られたじゃない!」
「すっ、すみません」
「さっさと片付けて始末書提出して!」
「はっ、はい」

先輩に睨まれながら、わたわたと倉庫の片付けに追われた。