パンの匂いが漂う部屋で、薄いメイクに今日は淡いピンクのリップを足してみる。
ドキドキしながら眼鏡をかけて、鏡を覗くと……。

「似合わないっ!」

午前6時半の絶望。
この分厚い眼鏡のせいだろうか、それとも髪型?
一つにまとめたり、緩く編んでみたり。
……顔は変えようがないから省きます。

ピー、ピー、ピー、……。

一晩明けても惚けたまま、柄にもなくお洒落しようとか思い立った。
しかし無惨な姿にオーブンからのお呼び出しで目が覚めた。
何やってるんだ、私。


焼き上がったパンを少し冷まして。
部長の分を丁寧にラッピングしていく。
していく……、と。
大変なことに気づいた。

あぁっ!やってしまった!

全部、クマ。


宮内部長がこれ食べるって……、まずい。
可愛いすぎる。

男の人ってこういうの嫌だよね?
わかんない、わかんないけど、恥ずかしいよね?


あぁ、ほら!
調子に乗るから……、頑張れば頑張るほど、私は空回りする。

これ以上悪いことが起きませんように。

定番の地味眼鏡と、薄いメイク、シンプルなミディアムヘアで、無難な一日を過ごせるよう祈りながら会社へ向かった。