お昼休憩になって、オフィスのカップを回収して歩く。
部長のデスクにあるマグカップを手に取ろうとして、胸の奥がドキンと高鳴り息を吐いた。

「……っ、はぁ」

ちょっと待って。
…………私、変態だってば。
自分にこんな一面があったなんて。
地味で変態なんて、最悪じゃない。

いつもの二、三倍、ガックリと肩を落として食堂へ。
部長がいるであろうこの空間を共有することが後ろめたくて、私はなるべく体を小さくしてコソコソと隅っこに席を取った。

いただきます。

部長に渡す分とは違いガサガサと袋に詰めたパンを食べ始める。
……ん、個人的には上手くできたと思うけれど、どうかなぁ。


「あれ?司のパン、美味そう!」
「うん。美味いぞ」

突然聞こえた宮内部長の声にドキッとする。

「いいなぁ、俺にも食わせろよ」
「だっ、ダメだ!!」
「子供じゃないんだから。少しいいだろ」
「俺のだ!絶対やらねー!」
「……本当、司はパン好きだよなぁ」
「わかってるなら取るなよ」

そうだ、部長の名前、……司さんだった。
遠くで笑う部長の横顔を眼鏡越しに盗み見る。
オフィスでは見せない少し砕けた話し方が新鮮。

宮内部長は大人なのに、司さんは子供っぽい。

ふふっと上がった私の口角は、幸い肩まで伸びた髪が隠してくれた。