コピー機の間に、資料の間に、ゴミ箱に、……念のため自分のデスクも。

思い当たる場所は探したのだが見つからず、最後に残ったのは白坂先輩のデスク。

「失礼します……」

いないけれど、コソッと声をかけて先輩のデスク上の書類を遠慮がちにパラパラとめくる。
椅子を引き出し、下に落ちていないか頭を潜らせると、後ろから宮内部長の声がした。

「田代、とりあえずこれ。パソコンに保存してたやつ印刷したから……」

「えっ、ぶちょ?……あぁっ!」

ガンッ

「ーーーっ」

痛い。
地味に痛い。

「だ、大丈夫か?」

部長が引き上げてくれる。
私の後頭部は机の角に打破されたけれど。
手にはしっかりと二枚の用紙が握られていて、光で確認すると確かに報告書の続きだった。

「ありましたー!」

「田代、眼鏡ずれてる……」
「えっ」

私はそんなに可笑しい顔なのか、部長がお腹を抱えて笑い出す。
恥ずかしすぎて乱れた髪を整えながら俯いた。
でも、相手が部長だからかな。
嫌な気がしない。

「しかしこれは白坂が犯人だよな」
「隙間から落ちて気づかなかったのかもしれません」
「んー……」
「宮内部長、忙しいのにありがとうございました!作業に戻りますね」

私はホッとして拾ったプリントをコピー機に挟み印刷部数を入力する。

「……じゃ俺も、田代のパン食べながら残業片付けるかぁ」
「……っ」

ドキリとして肩を竦め、デスクに向かう部長をチラリと見た。

部長と二人きりの残業は、思いのほか居心地が良くて。
白坂先輩に少しだけ感謝した。