勤務終了の時間になり、少し経つと私達を横目に帰っていく社員。
白坂先輩は腕を組んで仁王立ちしたまま、私のミスだと言い張った。


「二人とも、どうした?」

デスクで仕事をしていた宮内部長がファイルを片手に近づいてくる。

「宮内部長!……田代さんの仕事がテキトーで、注意していたんです」
「そんな……」
「明日の会議で使う書類の順序がバラバラで、私が確認していなかったら大変でしたよ」
「……っ」

口を開いたところで、睨みつけられ思わずつぐむ。

「……そうか、でも今気づいてまだ良かったじゃないか。田代もしっかりな」
「…………はい」

きっと何を言っても先輩に言いくるめられて終わりかも。
しょんぼりと俯くと、眼鏡をかけているのに視界が歪んできた。

「宮内部長、良い人すぎますー!」
「誰にでもミスはあるだろ。白坂、よろしくな」
「あ、そうだ宮内部長!新人指導の仕方教えてくださいよ」
「ん?あぁ、悪い。俺また製造の様子見にいくようだから、今度な」
「はーい」

……泣きそう。

宮内部長が出ていった後、間違っている報告書を集め呆然と見つめる。
その量に溜め息を吐きつつ、私の指導が大変だから間違えたのかなぁなんて、苛立ちを打ち消すように思い始めた。
先輩と二人でやればすぐ終る、よね。

「じゃあ、お疲れ様。ちゃんとやっといてね」
「え……?」

白坂先輩、帰っちゃうの?

先輩はいつの間にか帰り支度を整えて、振り向きもせずにオフィスのドアを涼しそうにくぐっていった。


やっぱり、モヤモヤする。
仕事って、社会って、こうなのかな?



不満があります、でも言えません。

……こんな私が一番不満。