なんだかスッキリした。

私、少しずつだけど変われるような気がしてきた。
宮内部長の言葉が、不思議と胸の中で勇気に変わる。


単純な私はオフィスを目指して必死で走った。
しかし足元しか見ていなかったことが災いして、何かに衝突し眼鏡のレンズが瞼にへばり着く。

「んぶっ!?」
「わっ、悪い」

……この声はっ。

「宮内部長!?すみませんっ!」

ぶつかった拍子にずれた眼鏡が、頭を下げると同時にカシャッと床に落ちた。

「あっ」
「なかなかの覇気だったぞ。その調子で頑張れ」
「え……」
「あぁ、でも。前は見て歩くように」

部長がクスクスと笑いながら眼鏡を拾ってくれる。
ぼやけた視界だったけれど、確かに私にも笑顔をくれた。
はっきり見えないからか、自然と顔は上を向く。

「あははっ、はい!ありがとうございます」
「……っ」

はっ!私ったら部長と笑い合うなんて恐れ多い。

「失礼しますっ!」

調子にのっちゃダメ。
仕事に集中しないと。
私みたいに地味な女が舞い上がったら、埃が出てしまいます。