宮内部長……。
誰にでも、優しく笑うんだな。

耐えかねてコソコソと飛び出した私は、なぜこんなにもモヤモヤしているのか。

「なんだろ……、変なの」

疲れてるのかな。
とにかくっ、今は急いで報告書を回収しないと。
余計なこと考えている場合じゃない。

私は製造部を走り回って根岸部長を探した。

「いたっ、根岸部長!」
「あぁ、田代ちゃん」
「明日の会議で使用する報告書を……」
「報告書ね~、いやぁさっき社長と話してたんだけど」
「はい?」
「ほら、来週末の飲み会だよ!新入社員の歓迎会」
「えっ?……はぁ」

あぁ、やっぱり始まってしまった。
延々と聞くことになるのだろうか。
この間は宮内部長が助けてくれたけれど……。

『根岸部長にはあのくらい強引じゃないと。仕事に戻れないからね?』

……宮内部長、もたもたしている私のためにアドバイスしてくれたんだよね。


「田代ちゃんはどう思う?ちょうど新入社員の意見も聞きたくていたんだよ」
「……部長」
「そもそも部所ごとに……」

私は早く仕事に戻らないといけないんです!

「根岸部長、報告書!をっ、いただけますか!?」
「あ、はいこれ……」
「ありがとうございます!失礼しますっ」

久々に張った声に自分で驚きながら、報告書を受け取って走り去る。