ぐぅ。

「腹減ったな……」

静かなオフィスに司さんの空腹が鳴り、オカズを詰めてきたお弁当箱を取り出す。
パカパカと蓋を開けると歓声が聞こえて、クスリと笑みが溢れた。

「パンなんですけど……」
「ん?」

朝起きた私は、あなたへの想いをコラージュした。

初めての恋は、ドキドキのココアパンから。
優しい甘さのカスタードであなたとフィーリング。
メロンパンに愛を込めた。

もう一度伝えたい、私の気持ち。
色々考えたんだけど。

「私がパンなら、そのまま食べてほしいと思って」

素朴な、素材そのものの味。
私はどんな味ですか?

「それって、こっちを食べてもいいってこと?」
「へ?」
「いつか、パンがなくなったら食うかもって言ったの、覚えてる?」

……覚えているけれど、でも付き合う前だったような。
ジリジリと迫りくる、なぜか妖艶な司さんに溜め息を呑んだ。
立ち上がった彼に今度は見下ろされてしまう。
ちょっと意地悪な目つきが、大人っぽくてうっとりしてしまう私は変態ですか!?
会社とはいえ二人きりのこの密室は危険かもしれません。

熱を持った鋭い眼差しが近づいてきて、なんだか甘い雰囲気になって、やっと彼がしようとしていることがわかって。

「……あのっ、それってこういう意味だったんでしょうか」
「やっと気づいた?」
「……っ」
「お預けだったからね。俺にしてほしいこと、あるなら言いなさい?」
「……ぎゅって、してほしいです」

私もその熱に応え手を伸ばした。

「……他には?」
「じゅ、じゅうぶんです」
「まぁ、会社だしね」

そう言うと、彼に首筋をカプリと食べられる。

「きゃぁ!?」
「あはは。美琴、美味そうな匂いがするね」
「っ!」

恥ずかしくなって真っ赤になり、彼の胸にぐりぐりと埋もれたら、ほのかに感じる深い煙草の匂い。

「お前、マジで可愛い」

温もりに触発されて、もう一つしてほしいことが増えた。
つま先に力を入れて、司さんの胸から顔を出す。
恥ずかしくて小声になってしまったけれど。

「あと……。仕事が終わったら」
「ん?」

「……キスしてほしいです」

一瞬、目を丸くした司さんはすぐに優しく微笑んだ。

「キスだけで済むと思うなよ」

訂正。
妖しく微笑んだ。


「続きは、あとでね」





恋するパンは、君の味。