夕陽に囲まれた食堂の勝手口から少し離れた異空間。
誰にも見られたくなくて、二人でしゃがみ込んだ午後6時。
オレンジ色のハイライトに目を細めると降り注いだキスは、少し深くて苦しかった。
優しく笑ったり、照れ隠ししたり、不満気な顔をしたり。
どんどんあなたが増えていく。
時々私に向ける鋭い眼差しにそろそろ自惚れてもいいのかな。
彼のフォーカスは、私だって。
たった一日なのに、離れたくない。
「ワガママ、だよね……」
いつも通り掃除をする、いつも通りの朝。
朝陽が差し込んだ静かなオフィスで、溜め息とともに体の中からザワリと鳥肌が立った。
今日の私は体感温度の計算式に、心理状態をプラスすべきかもしれません。
「司さんが会社にいないなんて初めて……」
彼のデスクの上にはファイルや書類が積み重なっていて、あと十分もするうちに「おはよー」の声が聞こえてきそう。
胸にぽっかり穴が空いたみたい。
寂しさで唇に伸ばした指を途中で止め、頭をブンブン振ってオフィスのゴミ集めを始めた。
司さんのことばっかり考えてると、変な顔になっちゃうから。
私は自分の仕事を頑張ろう。
そして明日会ったら、ぎゅってしたいな。
そう意気込んだ時、オフィスのドアが開いて息を呑む。
彼が来るはずもないのに、反射的に見つめたその先に現れたのは。
「おはよう、美琴ちゃん」
「……佐川専務」
「そんな残念な顔しないで?毎朝掃除してるんだってね。社長も感心してたよ」
「……あ!きっ、昨日はすみませんでした」
おもいっきり叩いて、しかもそのまま逃げるという失態を演じた私。
ガバッと頭を下げられるだけ下げた。
就職して半年も経っていないのに、もしかすると依願退職の危機。
「いや、僕こそすまなかった」
「……え?」
「宮内にも悪いことをしたと思ってる」
佐川専務が、謝るなんて……。
明るさと元気のない彼は、本当に反省しているみたいだ。
しかしそれよりも。
なるべく二人きりにならないよう司さんと約束をしたので、どうしても落ち着かない私は早く誰かが出勤しないかとばかり考える。
「それと今までのことも。追いかけ回してごめん。もうしないよ」
「そうですか……」
飽きてくれたのかな。
少しほっとして、同時に警戒心も揺らいだのだけれど。
「美琴ちゃんのこと、本気で好きになったんだ」
「……は?」
真っ直ぐに見つめられて、私は眉を寄せて視線を外した。
そんなの信じられません。
「あの、冗談はやめて……」
「本気だよ」
「え、えっと。私は司さんが好きなので」
「わかってる。でも……」
「え?」
「絶対に君を僕のものにしたい」
そして一瞬、何かが唇に触れた。
誰にも見られたくなくて、二人でしゃがみ込んだ午後6時。
オレンジ色のハイライトに目を細めると降り注いだキスは、少し深くて苦しかった。
優しく笑ったり、照れ隠ししたり、不満気な顔をしたり。
どんどんあなたが増えていく。
時々私に向ける鋭い眼差しにそろそろ自惚れてもいいのかな。
彼のフォーカスは、私だって。
たった一日なのに、離れたくない。
「ワガママ、だよね……」
いつも通り掃除をする、いつも通りの朝。
朝陽が差し込んだ静かなオフィスで、溜め息とともに体の中からザワリと鳥肌が立った。
今日の私は体感温度の計算式に、心理状態をプラスすべきかもしれません。
「司さんが会社にいないなんて初めて……」
彼のデスクの上にはファイルや書類が積み重なっていて、あと十分もするうちに「おはよー」の声が聞こえてきそう。
胸にぽっかり穴が空いたみたい。
寂しさで唇に伸ばした指を途中で止め、頭をブンブン振ってオフィスのゴミ集めを始めた。
司さんのことばっかり考えてると、変な顔になっちゃうから。
私は自分の仕事を頑張ろう。
そして明日会ったら、ぎゅってしたいな。
そう意気込んだ時、オフィスのドアが開いて息を呑む。
彼が来るはずもないのに、反射的に見つめたその先に現れたのは。
「おはよう、美琴ちゃん」
「……佐川専務」
「そんな残念な顔しないで?毎朝掃除してるんだってね。社長も感心してたよ」
「……あ!きっ、昨日はすみませんでした」
おもいっきり叩いて、しかもそのまま逃げるという失態を演じた私。
ガバッと頭を下げられるだけ下げた。
就職して半年も経っていないのに、もしかすると依願退職の危機。
「いや、僕こそすまなかった」
「……え?」
「宮内にも悪いことをしたと思ってる」
佐川専務が、謝るなんて……。
明るさと元気のない彼は、本当に反省しているみたいだ。
しかしそれよりも。
なるべく二人きりにならないよう司さんと約束をしたので、どうしても落ち着かない私は早く誰かが出勤しないかとばかり考える。
「それと今までのことも。追いかけ回してごめん。もうしないよ」
「そうですか……」
飽きてくれたのかな。
少しほっとして、同時に警戒心も揺らいだのだけれど。
「美琴ちゃんのこと、本気で好きになったんだ」
「……は?」
真っ直ぐに見つめられて、私は眉を寄せて視線を外した。
そんなの信じられません。
「あの、冗談はやめて……」
「本気だよ」
「え、えっと。私は司さんが好きなので」
「わかってる。でも……」
「え?」
「絶対に君を僕のものにしたい」
そして一瞬、何かが唇に触れた。