わたしたちはまず、映画館に向かった。
新作の恋愛物の映画が見たいと言った、わたしのリクエストだ。
「この映画、俺も見たかったんだよね〜」
「そうなんですか?」
「あ、敬語禁止」
「す、すいません…あ…ごめん」
「ははっ、おもしろいよね。
中神さん」
花村先生はけらけらと笑いながらわたしの頭を撫でた。
何か…兄妹みたい。
「やっぱ、さん付けってのも微妙だな〜。
秋葉で…いい?やっぱ」
「あ、秋葉で、いいです。
わたしは、あの…先生で」
わたしはしどろもどろの日本語で返事をした。
花村先生はニコニコとほほ笑みながら、またわたしの頭を撫でた。
わたしたちが観た映画は、今話題の恋愛映画。
お互い子を持つ男女がひかれ合い
恋に落ちるという話。
「いい話だった〜」
映画館を出た花村先生は服の裾で涙を拭きながら、呟いた。
「やっぱり、あの二人が夕日をバックに結ばれるシーンが特に…」
「ふふっ…」
「え?」
「先生って、感動屋さんなんですね」