家に帰ると、母と父がテーブルにせっせと何かをのせていた。

「ただいまー、あ、なにそれ? 美味しそう」

 テーブルの上には、色とりどりの具材がのったちらし寿司や、花かまぼこ、小鯛の刺身や、普段なら食べないものがたくさんあった。
 鈴音はそれに目を奪われ、振袖を脱ぐのも忘れて、夢中になってしまった。

「今日、なんかあったっけ?」

「え!? 今日は、鈴音の成人式でしょ!?」

「あ、そうだった」

 いろいろとありすぎて、忘れてた。

 そういいそうになったが、ぐっとこらえ、鈴音はその場に正座をした。
 誰よりも早くはしをもって、食べる気がありすぎる鈴音だ。

「食べていい!? いいよね!?」

 鈴音は母にきいた。

「食べていいよー」

 鈴音と妹と弟がわーい!と、食べ物に飛びついた。
 鈴音はまず、ちらし寿司を取り皿に取った。
 ちらし寿司には、たまごやいくら、鮭などがのっていた。

「美味しい美味しい!」

 鈴音は家と外では、印象が全く違う。
 家では、いつもハイテンションで走り回っている印象で、外では、物静かで頭がいい印象。
 
 そう見えるのは、ただいつも一人で友達がいないからだと、鈴音は思っている。