羽織袴を着ていたり、振袖を着ていたり…と、きらびやかに着飾っている女性。
男性も羽織袴を着ていたり、背広を着ていたり…と、皆、とても綺麗だ。
その中に一人、誰とも話さず、笑顔も見せない女性がいる。
それが私、風神鈴音だ。
外見は、皆に負けず劣らず、着飾っているつもりだ。
一生に一度の成人式なのだから、それくらいはしないといけない。
鈴音の服装は、薄紅色で染められた生地で、いろいろなところに桜が刺繍されている振袖だ。
しかし、鈴音の性格が性格だからなのか、きらびやかに見えない。
はっきりにいうと、不釣り合いだ。
「やっぱり、私には不釣り合いなのかな…」
小さくそうつぶやいてから、てくてくとその場から逃げようとした。
しかし、誰かに「少し、いいですか」と、声をかけられた。
「もしかして、友達になろう! って、声をかけてくれた!?」と、鈴音は喜んだが、振り返ると背広姿の男性だった。