「誰が届かないって決めたんだ?」


耳に届いたのは一太ではない、恋い焦がれた藤堂さんの甘い声だった。

その愛おしいまでの声に私は振り返り、夕日で反射して上手く見えない藤堂さんの姿を見つめた。



「どうして?」




「紗愛、おいで。」





不意に名前を呼び捨てされ、頬が赤くなる。

胸の鼓動が早くなる。

差し出された手に、この身が焦がれそうになる。