揶揄ったわけではない。

自分の気持ちを抑えきれず、出た衝動を隠すために吐いた小さな嘘。

それがあんなにまで紗愛を傷付けることになるだなんて思いもしなかった。



期待してもいいのだろうか?


こんな年の離れた自分が淡い期待を持っても良いのだろうか?




藤堂は天を仰ぎ、その大きな両手で自身の顔を覆った。

脳裏に甦るのは軽蔑の眼差しで自分を睨みつける紗愛の瞳。