「まりあ」

「あっ……わ、私は……」


名前を呼ばれた途端、魔法が解けたかのように、失われた言葉が口から溢れる。


な、な、何だろうこの状況。

私は、一体どうして我妻君に好きな人の事を聞かれてるの??


「教えろよ、まりあ」

「なっ…んで、こんな時に私の名前呼ぶのよっ」


いつもは、まりあサマってからかうくせに。

こんな時に、我妻君は私の名前を呼び捨てにする。

胸が、張り裂けそうで苦しいよ…。


恥ずかしさを誤魔化すようにそう言って、我妻君から視線を反らす。

ーガタンッ

すると、我妻君は立ち上がる。

その反動で、観覧車がグラリと揺れる、そして何故か、我妻君は私の隣に座った。


「えっ……」

「何で、逃げんだよ?」

ーダンッ

我妻君は、両腕を私の顔のすぐ横についた。

そして、グンッと我妻君の顔が近づく。


「逃げて……なんてっ……」


私は、窓に背を預けるように、我妻君に追い詰められる。

な、なんで我妻君どんどん近づいてくるの!?

私は心の中で悲鳴を上げながら、なんだか泣きたくなって、必死に俯いた。