「俺は、低くて狭い世界も好きだけどな」

「え?」


私は、窓に手をついたまま、我妻君を振り返る。

すると、我妻君はなぜか真剣な顔で私を見つめていた。


「遠くて高くて目の届かない場所に、俺の心惹かれるモノとか、大事なモンがあるかもしれねーし」


「我妻君の、心惹かれるモノって……」


どんなモノだろう。


きっと、我妻君はその狭い世界に見つけたんだろうな…なぜかそう確信させる何かを感じた。


我妻君は、私と違って面白い考え方をするなぁと思った。

だから知りたい、我妻君の心惹かれるモノ。


 「なぁ……お前、好きな奴とかいんのか?」

「っ!?」


だけど、我妻君は私の質問には答えずに、質問を返してくる。

それに、息をするのを忘れる。

そして、言葉を奪われたかのように、何も言えなかった。

夕暮れが、観覧車の窓から差し込む。

我妻君の顔も、私の顔も、この緋色に染められている。

私の場合は、明らかに我妻君の質問に赤面してるんだけど、この夕日のおかげで隠せているといいな…なんて。