「頼むから、早く泣きやめ」

「ご、ゴメンっ……」


ため息をつく我妻君に、私は慌てて謝る。

そうだよね、いつまでもべそかいてたら、我妻君迷惑だよね…。


そう思って、離れようとする私を、我妻君は逃がさないと言わんばかりに強く引き寄せる。


「あ、我妻く……」

「俺、お前の泣き顔苦手だわ。すげぇ、苦しくなんだよ」


我妻君は、苦しそうにそう言った。

しかも、我妻君の腕はどんどん強くなって、少し痛い。


「お前が泣いてる時、なんて言ってやればいいのか、分かんねぇんだ。大丈夫とか…そんなんしか言えなくて、悪い」


言葉にならない分、まるで体で伝えようとしてくれているように思えた。

私は、我妻の胸に耳を当て、その鼓動を感じる。


「言葉なんて、いらないよ……」


気づけば、私はそう呟いていた。


「まりあ……?」

「我妻君が……こうして来てくれた事が、すごくっ…嬉しい」

「っ!!……そうかよ」


我妻君が、息をのんだのが分かった。

だけど、私達はそれから一言も交わさなかった。 

ただ、我妻君の体温を、鼓動を感じていたい、そう思ったから…。