ーヒュウウウウッ
ありきたりなお化け屋敷の音。
生ぬるい風が、フワリと私たちを撫で付ける。
「ひ、ひぃぃぃっ」
そして、情けない声を上げる飯島君を連れて、私達は絶叫迷宮への中へと突入する。
絶叫迷宮は、病院をモチーフに作られたお化け屋敷で、本物も出るとか言ういわくつきのお化け屋敷だ。
病室が並ぶ廊下を歩きながら、私は周りを見渡した。
「わぁ……このベッドとかも、リアリティーあるね、飯島君」
病室には、まるで今までそこに誰かが寝ていたかのような乱れ様。
廊下にチラホラある車イスは、ホコリが被っていて、チカチカと点滅する非常口の明かりが、気味の悪さを引き出している。
「お、俺に振らないでぇぇぇっ」
「あはは……」
なんというか、飯島君って面白い。
からかいがいあるなぁー…。
「おい、あんまり飯島イジメるなよ…」
「やぁ、ここまで怖がられちゃうと、イジリたくなっちゃうよ」
呆れる我妻君に、私は答える。
飯島君は、私と我妻君の背中に隠れて、目を瞑りながら歩いている。
「つか、お前が平気すぎるんだよ」
「我妻君はこういうの平気なの?」
「信じてねーからな」
「私も、だから怖くな……」
ーバッ
すると、目の前に白い服を着た女の人が現れる。
私と我妻君はほぼ同時に顔を見合わせて、背後の飯島君を見た。
「知らせない……ほうがいいね」
「あぁ、何も言うなよ?」
我妻君の言葉に、私は頷く。
さすがに、そこまで鬼畜じゃない。
話さないようにしなきゃ……。