「うん、それに出てくる言葉。…本当に、その通りだなって思うよ。」



「そうだね。」



こんな感じで、普通に会話は出来てるけど、やっぱり里奈さんのことは訊けなくて…。



心の中で、モヤモヤしてるうちに、私の最寄り駅に着いてしまった。



「じゃあ、のんちゃん、また明日。気をつけてね。」
「うん!またね!」



モヤモヤを抱えたまま、私は家に帰った。



その日の夜。
いおりんから、電話がかかってきた。



「もしもし?いおり〜ん…。」



「のん?どうしたの?デート、楽しくなかった??」

「ううん、デートは楽しかったの。でもね…」



私は、今日の出来事を、いおりんに話した。



「なるほどね〜。その里奈って子、優斗に訊いてみる。私も気になるし。」



そう言うと、いおりんは、「また明日ね」と言って、電話を切ってしまった。



あの子、しょうちゃんとどんな関係なんだろ…。



もしかして、しょうちゃんの元カノとかかな。



そんなことばかり考えながら、私は眠りについた。
次の日の朝、私はいつもより早く目が覚めて、3本早い電車に乗った。



早いからいつもより空いてるなぁ〜。



そう思いながら、座れる場所を探した。



やっぱりあいてないかぁ…。



と、その瞬間。私は、見つけてしまった。
あっ!



しょうちゃんだ!!



しょうちゃんが、席に座っているのが見えた。



あれ?でも、あそこって…。



優先座席、だよね?

確かに、もう座れる場所はなかったけど…。



電車が停止して、妊婦さんが乗り込んできた。



しょうちゃんは、まだ気づいてないみたい。



妊婦さんが、座れる場所がなくて困っていると、その後ろにいた子供がしょうちゃんの元へ走って行った。
「ねぇ、お兄ちゃん、ここ、優先座席っていうんだよね?僕のお母さん、お腹の中に赤ちゃんがいるんだ。だから…」



すると、子供が全部言い終わらないうちに、しょうちゃんは、



「そっか、ごめんね、気づかなくて。どうぞ。」



って微笑みながら、その妊婦さんに、席を譲った。

「あ、のんちゃん。おはよう。」



しょうちゃんが、私に気づいて声をかけてくれた。



「おはよう…。」



話しかけられて嬉しいはずなのに、さっきまでの出来事に、頭がついていかなくて、素っ気ない返事になってしまった。



「もしかして、さっきの見てた?」



しょうちゃんの声に、元気がなかった。



「…うん。」

私がそう答えると、しょうちゃんは、



「僕のこと、嫌いになった?」



と訊いてきた。



私が答えられないでいると、北高の最寄り駅についた。



しょうちゃんは、哀しそうに微笑んで、



「じゃあね。」って電車を降りていった。



待って!って言いたかったのに、声が出なくて。



なぜだかわからない涙が、私の目から溢れ出した。