「す、すみません。」



その一言しか言えず、社長室から飛び出してしまった。

上がった息を整えることすら出来ず、給湯室で身を潜める。

どうして?どうして、あんなことするの?

大勢の中の一人にはなりたくない。

神城社長に愛されるなら、神城社長の特別になりたい。




入社した時から神城社長のことが気になっていた。

私に取ったら雲の上の存在だから、容易にその気持ちを口にすることすら出来ない。


あれから何年。専務付きの秘書にまで登り詰めた。


急ではあったが、高橋専務から神城社長の秘書に人事異動が言い渡された時、少なからずも悦びで溢れ返っていた。