「熟するまで待つしかないのか」

二階堂さんも頭を抱えている。

「実はとっておきのものはあるんだけど。それは最終的に使用することにしてるんだけどね」

「とってあるんですか、そんなもの」

ただの恋愛相談だけでは終わらない、隠し球をちゃんと持っているから恋愛コンシェルジュマスターなんて名乗れるんだろうな。

「ただそれはある意味、賭けのようなもので、うまくいく保証はないんだよね」

「でも、それでたいていは成功してるんですか？」

「状況によるけれどね。それを見極めないと使えない」

「そうですか……」

「誘ってみる、ってどうでしょう」

「誘い？」

「あえて誘うような雰囲気にもっていて、向こうから誘うようにするんです。脈があればなにかしらのシグナルは出るはずです。星野さんの好きなひとは相当真面目な方だろうから。そのシグナルを見失わないように」

「……わかりました」

二階堂さんは薄まったアイスコーヒーをゆっくりと飲む。

その仕草も姿勢を正して飲んでいるのでそれだけでも絵になる。

気づけば別の女性客がわたしを避けながらみていることに気づいた。

美しいルックスの持ち主は女性の目にさらされても堂々とできるんだな、と感心してしまう。

「しかし、煮詰まらない片思いほど、面白くなっていきそうですね」

「え？　どういうこと、ですか？」

「こちらの話ですよ。どういう展開が待ち構えているか、楽しみですよ」

そういうと、二階堂さんはクスクスと軽く笑った。