6月も半ばに入った土曜日の午後にターミナル駅の近くにあるコーヒーチェーン店で待ち合わせをした。

すでにお店にいるとメールがあり、店内を見渡すと、ガラス張りのお店の奥に険しい顔をして小型のパソコンを操っている二階堂さんの姿を発見した。

髪の毛は茶色の短髪にきれいに揃えられた眉毛、切れ長の目にすっとした鼻、ちょうどいい厚さの唇。

今日の洋服はリネンコットンの淡い水色のシャツに黒のTシャツ、茶色のチノパン姿と初めて会ったときよりもかしこまってはいなかった。

すべて兼ね備えた容姿に近くに座るおばさんや女子の学生っぽい子たちが思い思いの飲み物を飲みつつ、二階堂さんを盗み見している。

アイスコーヒーを持って店の奥へと向かう。

「二階堂さん」

わたしが向かい合わせに座るなり、周りの女子たちの視線が嫉妬めいていて体のいたるところに突き刺さるんじゃないかと思うぐらいだった。

そんなことでめげている場合ではない。

今は桐島課長への相談のことで頭がいっぱいなのだ。

「忙しいなか悪いね」

「いえ。二階堂さんこそ、執筆のお仕事だったり例の仕事だったりで忙しいんじゃないんですか」

「星野さんのことが気になってね」

二階堂さんは小型パソコンから手を離し、凝視した。

「わたし、ですか」

「なかなか先に進めていないみたいだから」

カラン、と二階堂さんのアイスコーヒーから溶けた氷の音がした。

「これといってなにも。それよりも先駆けされそうで怖いです」

「先駆けね。アクション起こしてみる?」

「アクションですか? 起こしたとしてもそのことで引いてしまっても」

なんせカタブツ課長のことだし、仕事に支障が出てもらっても困るだけだし。

ストローを口につけ、一気にアイスコーヒーを口にする。

喉が幾分乾いていたのか、冷たさと乾きが軽減された。