「牧田先輩、この原稿部分の確認、お願いします」

原稿の束を牧田先輩に渡すと、ひょいっと細い指ですくい上げた。

机の上に置き、工場から来た資料と過去の資料、今現在作成中の原稿と照らし合わせていた。

「ずいぶんと嬉しそうね」

資料から目を離さず、牧田先輩がぽつりとつぶやいた。

「どうやら桐島課長が歓迎会に参加するそうで」

気がつけば染谷さんは他の社員のひとと話かけていて時折笑い声が聞こえてきた。

「そう。楽しそうでいいんだけど。星野さんが幹事なんだし」

「ええ、まあ、染谷さんが率先して、張り切っているっていうか」

精一杯の甘く、かわいい仕草を出して桐島課長へ話かけたんだろうな、と今、男性若手社員への態度から目に浮かぶ。

「星野さんもそうなんじゃない?」

牧田先輩は顔をあげ、こちらへ向けていた。

鋭い視線に体が硬直する。

「え、わ、わたしですか? わたしはただ染谷さんの付き添いで」

と笑ってごまかした。

牧田先輩は軽く笑い、机に広げた原稿や資料をかき集めていた。

「そういうひとに限って……。まあいいわ。これであってるから続けて」

「わかりました」

原稿の束を返してもらい、席に戻る。

まさかの牧田先輩の正論に言葉がでてこなかった。

それよりも衝撃的だったこと。

牧田先輩と今まで仕事をしてきたけれど、あんなに冷たい対応をされたのは初めてかもしれない。