「何?」

牧田先輩はわたしと染谷さんの顔を交互に見ている。

「あのーですねー、歓迎会をやりたいなって思ってー」

「歓迎会? 誰の?」

「桐島課長ですよー。新しい課長が入ったってことなので、歓迎会やりません? そういえばここ最近会社で飲み会ってやってなかったじゃないですかー。これからマニュアル作成で忙しくなるっていうのもあるし、契機付けってことでどうですか?」

桐島課長という名前が出たとき、牧田先輩の眉が少しだけぴくりと上がった。

「で、星野さんはどうなの?」

「わたしは、あの……」

「星野センパイもいいみたいな話ですけど」

と染谷さんは笑い飛ばしながら話に加わる。

「って、ちょっと勝手に言わないでよ」

染谷さんがやりたいっていったから一緒に付き合っただけなのに。

ひとり涼しい顔をしている染谷さんにいらつきながらも牧田先輩の返事を待つ。

「やればいいんじゃない?」

あっけらかんとした答えだった。

それを聞いて安心したのか、染谷さんは小さくガッツポーズをしている。

「条件としては、私は幹事やらないから。そうね、幹事が星野さんがやればいいんじゃない」

「牧田センパイ、マニュアルまとめてますからねー。星野センパイ、幹事手伝いますよー」

「え、そ、そんな」

「じゃあそれで決まりってことで」

勝手に決められてしまった。

牧田先輩はお昼を食べに社員食堂へとさっさといってしまった。

「桐島課長はあたしが担当しますから」

牧田先輩が食堂へといってしまったのを見計らってから、わたしの顔をじっとみて、染谷さんが堂々と宣言してきた。

「手伝うっていったじゃないですか。いいですよねー?」

「え、う、うん」

「やったー。これで桐島課長と少しでも近づけるー」

染谷さんは鼻歌まじりで食堂へと向かっていった。