仕事にならないのはわたしのほうだよ、と言いたいぐらいだった。

今夜、訪ねてくるなんて、と思っていたらいてもたってもいられなくなる。

このあとの展開はどうしたらいいんだろう。

二階堂さんからの指示メールはまだ来ないし。

モヤモヤとした気持ちの中、マニュアルの新規入力をしていると、

「星野さん、ちょっといい?」

牧田先輩が書類を持って、わたしの席にやってきた。

牧田先輩は呆れているのか、少し口を歪ませていることに気づく。

「この請求書の数字がおかしいのと、マニュアル用の数字、文字が間違ってる。どうしたの? いつもならこんな小さなミスしないのに」

「ごめんなさい」

「いいわ。これ直しておくから」

といって、牧田先輩は涼しい顔をして書類を取り上げると自分の席に座って黙々と作業をしていた。

浮かれてしまっては仕事にならない。気持ちを正さなければ。

「牧田センパイにしかられてましたけど」

「うん」

「最近、カリカリしてますよね。どうしちゃったんですかねえ」

そういえばこのところ牧田先輩はいらついていることがある。

以前はミスでも注意だけで、そんなに怒るひとじゃなかったのに。