自宅に到着してしばらくたってからスマホへメールが入った。

今日来店したお礼とともに早速課題が送られてきた。

『まずは好きな人に声をかける。』

ただそれだけだった。

声をかけるって普通に会社で声をかけてるし、それに桐島課長から声かけてくれるからいいのにな、と思うんだけど。

それよりもこれが恋愛コンシェルジュマスターの指示なのかどうかもあやふやになってきた。

それでもレポートを出さないと次に進めないからしかたない。

次の日、どうやって桐島課長に声をかけたらいいものか、悩んだ。

牧田先輩から頼まれ、今ある資料の本数冊を返してかわりに別の資料の本を持ってきてほしいと頼まれた。

書庫に向かうとちょうど桐島課長がひとりで資料をみていたところだった。

「桐島課長、あの」

「星野くん、どうかしたのか?」

「あ、あのですね」

桐島課長は資料から顔をあげ、わたしの顔をみてニコリと笑う。

その素敵な笑顔にこっちはなぜか焦ってしまう。

えっとこういうときは何をしゃべればいいんだっけ。

「え、えっとですねえ」

頭の中が真っ白で何をいっていいかわからなくなっているところで、

「課長、ちょっといいですかー」

ガチャっと大きな音を立てて書庫の扉が開く。

とすかさず染谷さんが間に入り込んできた。

「ん? どうした。染谷さん」

「あの、この資料のここなんですけど」

体を擦り付けるかのように桐島課長にくっつきそうになる。桐島課長はすっと横に逃げた。

「わかった。工場へ連絡いれるから」

といってさっさと桐島課長はいってしまった。