冷静にならなくっちゃ。

課長とはたまたま古本市で一緒になっただけで、それからお茶をして帰ってきただけ。

ただ同じマンションの同じ階のお隣さんだけ。

本当にそれだけなんだから。

だけど、会社では見せない素敵な姿をみただけで、胸がキュンとしてくるのはどうしてなんだろう。

だめだ、変な方向へと勝手に妄想が暴走している。

ただのお隣さん、で、ただのウチの課の課長。

ただそれだけなんだから。

あのルックスだから彼女とか連れ込んだりするんだろうか。

しかもわたしがいる、この隣で?

いかん、いかん。課長は男性だ。

あの甘い顔にだまされてはいけない。

合コンで知り合ったあの男さえよくわからない女を連れて歩いていたわけだし。

バカみたいだ。

部屋の奥へと進み、カバンをベッドに放り投げると、スマホと一緒に茶色の袋が一緒に出てきた。

せっかく見つけた本なのに。集中して読めないよ。

ベッドに腰掛け、茶色の袋から本を取り出すと、一緒に白い紙が出てきた。

「え、これって」

【このチラシを持参した方限定。恋愛に関するご相談、なんでもお引き受けいたします。恋愛コンシェルジュマスターへのご用命は月星書房まで】といった文章とともに簡単に記された地図が載せられていた。

「恋愛コンシェルジュマスターっているんだ……」

チラシをもってしばらく唖然としてしまった。