駅の出口を出て、わたしは自宅マンションへと向かおうとした。

「じゃあ、わたしはここで。今日は楽しかったです。ありがとうございました」

「僕もだよ。じゃあ、また」

と桐島課長は駅から反対車線の通りを歩きはじめた。

歩く方向が一緒なんですけど……。

コンビニをすぎて横断歩道を渡ろうと信号待ちをしていると、なぜか桐島課長の姿が近づいてきた。

ん? まさか、わたしのことを追ってきているとか、そんなことはないか。

「星野くんはこのあたりなの? 家は」

「あ、はい。ここの突き当たりのマンションなんですが」

「僕もだけど」

「えっ」

会社からの住宅補助金が出ていて、そのツテからこのマンションを借りることになったけれど、まさか桐島課長もこのマンションを選択するとは思わなかった。

マンションのエントランスに到着する。

桐島課長はいたって普通に歩いている。

だって住んでいるところだから特別あやしい行動をとる必要もないか。

でも、桐島課長と同じマンションって。

そういえば、わたしの隣、空室だった気がした。

エレベーターの最上階である6階のボタンを押す。

けれど、桐島課長は他の階のボタンは押さなかった。

やっぱりもしかしてこれはつけてきたってこと!?

気持ちの整理をしようとも気がつけばエレベーターは到着し、わたしが降りてから桐島課長も降りた。

ジャケットから何かを取り出している。

え、なに。何かされるの、わたし!?

わたしは速歩で自分の部屋のドアの前に立つと、隣の部屋のドアの前に桐島課長は立って鍵を開けていた。

「えっ」

「お隣さんか。よろしくな」

にっこりと桐島課長は笑って自分の部屋へと入っていってしまった。

どうしよう、桐島課長とお隣さんになっちゃうなんて。