せっかく桐島課長と二人っきりなのにどうしてケンカ越しになってしまったんだろう。

本当はもっと穏やかに話をしたかっただけなのに。

すぐに自分の席に戻ると、牧田先輩が自分の席から立ち上がり、こちらへ向かってきた。

「いこうか」

「はい」

牧田先輩とともに備品をチェックしに総務の部屋の隣にある倉庫へ行った。

窓にはブラインドが下りた状態で薄暗かった。

総務のある部屋の半分ぐらいある広さの倉庫には天井の高さまであるスチール棚が入り口に向かい合うように部屋中に詰め込まれるように並べられていた。

各部署の必要なものはたいていここに保管してあり、各部署からメールで依頼される。

入り口に一番近い棚には部署の名前のプレートがつけられた棚があり、そこに必要な備品を並べて、倉庫からなくなったものは注文したり、備品の数のチェックをするのはたいてい二人一組で作業をしていた。

プリントアウトされた各部署の備品名と数量をチェックし、棚の上に並べていると、

「星野さん、ちょっといい?」

「……はい」

ダンボールの中に梱包されたままのボールペンやメモ帳などを必要な分だけ取り出していたが、手をとめた。

「桐島のこと、どう思ってる?」

「どうって、ただの課長ですよ」

「ただの課長か」

そういうとおかしいのか、牧田先輩はクスクスと笑いだした。

「どうかしたんですか?」

「星野さんにその気がなければなんだけど」

できれば、その続きを聞きたくはなかった。

深刻そうに眉間にしわをよせながら牧田先輩は話し始めたから。

それでも牧田先輩はひるまず話を続けた。

「桐島に近づくの、やめてくれないかな」