星彦さんとお昼を一緒に過ごしていたら非常階段へいく時間が少なくなってしまった。

「いろいろ準備しなくちゃいけないから、これで」

星彦さんとはご飯を食べ終え、先に返却口へとお盆を返し、食堂を後にする。

星彦さんは先に席をたつと少し不満そうに、またねと口を尖らせていた。

さすがに昼休みも終わりに近づく頃だから非常階段にはいないんだろうな、と思いながら、非常階段へ続く扉を開ける。

熱い風とギラギラと差し込む日差しが食堂で浴びたクーラーで冷え切った体温を急上昇させた。

「お疲れ様」

夏の暑さ以上に体を暑くさせたのは紛れもなく桐島課長が非常階段の真ん中に足を投げ出し座っていたから。

「……お疲れ様です」

いつもならすでに総務の自分の席に座って仕事の準備をしているはずなのに。

桐島課長は座ったままわたしを見下ろしていた。

「もしかして、待ってました? わたしのこと」

そう言ってしまう自分に驚いて思わず口元を右手で押さえた。

「そうとるならそうとっても構わないよ」

冗談と捉えてほしかったのに、桐島課長は冷静さを保ったまま答えてくれた。

まさかの反応に心踊る。

わたしのこと、待っててくれたんだ、と都合がいいのかもしれないけれどそう思うようにした。

「待っていてくださって、ありがとうございます」

桐島課長はわたしが小さくつぶやくと、うん、と軽く頷いてくれた。