工場棟にいるから別に二階堂星彦さんとは接点はもうないだろうとタカをくくっていた。

清々しい気持ちを胸に抱きながら、会社へと向かう。

更衣室へ入ると、着替えをすませ、ブラシで髪の毛をとかしていた染谷さんが待ち構えるかのようにすり寄ってきた。

「星野センパイ、やっぱりいましたよね？」

「え、誰？」

「あのコーヒーショップにいたあのイケメン。会社に来る時、スーツ姿のイケメンにあったんですけど」

染谷さんは髪の毛を整え、目を輝かせてわたしをみている。

そんなに期待されてもなあ、と笑ってごまかした。

「だから似てるひとだってば」

ため息をつきながら自分のロッカーをあけて制服を手に取る。

「隠さなくてもいいのに。工場のシステム変更の関係で入ったんですよね、彼」

「……そうなんだ」

制服のボタンをとめる手がとまる。

マニュアル変更に伴ってシステムも若干入れ替えるみたいな話を聞いていたけど、その関連で来ていたんだ。

かといって、あの彼は二階堂月彦さんではないから別人なんだけど、どうしても同じ雰囲気なので頭がごちゃごちゃになる。

「聞いてたと思ってましたけど」

「まったくそんな情報、知らなかったし」

「いろいろ教えてくださいよー。マニュアル持って行くとき一緒にいけばよかったー」

こっちよりも染谷さんのほうが数段情報が早いんだから、逆に教えてもらいたいものだ。

わたしも着替えをすませて染谷さんとともに総務へと向かった。