桐島課長のことを考えたいのに、生産機械設備課に入った二階堂さんが気にかかる。

気を紛らわせるべく、部屋を見渡すと、桐島課長から借りた本がベッドサイドに置かれたことをすっかり忘れていた。

早く読んで桐島課長と本の話をして距離を縮めていかないと。

牧田先輩の影がちらついているから余計に焦るけれど。

ベッドサイドの本を手に取り、ベッドの上に寝転ぶとページをめくる。

内容は恋に悩む女性が恋愛相談を生業としている男性と出会い、片思いの男性とどうやったらくっつくことができるのか、という今の自分の状況とそんなに変わらない話だった。

わたしと違うのは次第に片思いの男性からその恋愛相談の男性に心移りをしているというところだ。

片思いの彼よりも恋愛相談の男性の魅力的な仕草に戸惑いをみせている。

相談相手を好きになるなんて、と思うけれど、さまざまな試練や葛藤があって片思いの彼の真実をみた主人公が決意するのは納得の話だった。

だからといって今のわたしの恋愛状況がこの話のように変わることはない。

確かに二階堂さんは世間でいうイケメンであることには間違いないけれど、やっぱり浮世離れした雰囲気に恋愛感情は生まれない。

それよりもやっぱり付かず離れずな関係であるけれど、桐島課長を第一に想っているから。

さらりと流し読みをしてしまったけれど、これで少しは桐島課長と話ができる。

少しでも話ができる、そう思えたら少し安心した。

明日に本を返しながら少しでも桐島課長との時間をつくっていこうと気持ちを前向きにさせた。