肌は少し浅黒で、髪型は束感のある栗色のショートヘアにあう面長、きれいに揃えられた眉毛、切れ長の目にすっとした鼻、ちょうどいい厚さの唇。

髪の色も違うけれど、どうみてもあの二階堂月彦さんと同じ顔だ。

わたしの顔をみるなり、二階堂さん似の男性がさわやかに真っ白な歯をみせて笑っている。

「はじめまして。二階堂星彦です」

その物腰の低さに寒気がした。

声色も若干高めだけれど、二階堂さんの声にそっくりだったからだ。

「は、はじめまして。総務の星野です」

「あれ？　奈々実ちゃん、二階堂のこと、知ってるの？」

「え、い、いいえ」

心臓の高鳴る音が聞こえるんじゃないかと心配になりつつ、それでも二階堂星彦さんにどう目をやっていいかわからなくなっていた。

二階堂星彦さんはわたしをじっとみて、

「知っている人に似てますけど、さすがに会社にいるってそんな奇遇なことはないですよね」

といって、ケラケラと笑いながらわたしを見下ろしていた。

「こら、二階堂、奈々実ちゃんをいじめちゃだめだろ」

大崎さんはやさしく諭すように二階堂星彦さんに注意すると、二階堂星彦さんは反論するように、いたずらっぽい少年のような明るい笑い声を発した。

「大崎さん、いいじゃないですか、いい自己紹介になったわけだし。ね、星野さん」

そういうと、二階堂星彦さんは人目もはばからずわたしにウインクした。

ますますわけがわからなくなる。

頭の中がすでに混乱してしまい、二階堂星彦さんの空気に完全に飲まれてしまった。