「んじゃ、行ってくるわぁ!!」


「あ、涼!!」


勢い良く玄関を出た俺を、母さんが止める。


「何っ!!」


急いでいた足を止め振り返ると、母さんが一枚のメモ用紙を差し出してきた。


その紙には一言、


《涼を好きで良かった》


それだけ書いてあった。


それが奈々からの言葉だということはすぐにわかった。


“好きで良かった”


俺も、そう思えるだろうか?


たとえ今日、フラれたとしても。


“広瀬を好きになって良かった”


そう思えるだろうか?


そんなことは正直わからない。


ただ…


この恋が叶おうが、叶わなかろうが、


“好きになれて幸せだった”


そう思える恋であってほしい。


そう思ったんだ。