「あの…私ね、」
突然耳に届いた奈々の声は震えていて、俺は何だか複雑なキモチだった。
「私、涼が好き。」
顔を真っ赤にしながら俺を真っすぐに見つめてくる奈々。
その目を逸らしたい衝動に駆られながらも、俺は奈々から目を離すことはしなかった。
「ごめん。前も言ったけど好きな子いるんだ。だから付き合えない。」
本当は迷っていた。
彼氏がいるなら諦めようか。
望みがないなら止めようかって。
でも今日、奈々に好きだと言われて、やっぱり俺は広瀬が好きだと実感した。
広瀬以外考えられない。
本気でそう思った。
「えっ……」
「ごめん。その子しか考えられない。本気で好きなんだ。」
黙ったままの奈々を慰めてやることもできず、俺はその場を立ち去った。