「一つ、聞いていいか?」

俺が突然口を開くと、広瀬は驚いたように顔をあげた。


「何ですか?」


そう聞いてくる広瀬に、俺は少し戸惑いながらも聞こうとしたことを聞いた。


「彼氏いるって本当か?」

一瞬ビクッとすると、広瀬はまた俯いた。


「…はい。」


小さな声でそれだけ言うと、また顔をあげて笑った。


引きつった笑顔。


広瀬のそんな顔を見たら、何も言えなくなってしまった。


「そう…」


しばらく沈黙が続き、堪えかねた俺は口を開いた。


「一緒に帰ったりしなくていいのか?」


「お姉ちゃんと帰らなきゃだから…」


一緒になんか帰らないでほしい。


そんなキモチとは裏腹に、口は勝手に動いていく。


「もう高三だぜ?一人で帰れるだろ。お前だって一人で帰ってたじゃん。」


何気なく言った言葉。


なのに広瀬はまた辛そうな、寂しそうな顔をして。


次の言葉を聞いて、俺は固まってしまったんだ。