「今日体育の授業でさ……」 いつもはちゃんと聞く奈々の話も今日は右から左へ。 適当なところで相づちをうちながらため息を繰り返していた。 「涼?聞いてる?」 「聞いてるよ。」 「…つまんなそうじゃん。」 奈々は不機嫌そうにそう言うと、突然早足になって、どんどん先に歩いていってしまった。 「あ…」 その後ろ姿を見つめながら俺はただ立ち尽くしていた。 追い掛ける力すら湧かなかった。