「いえ。じゃあ、さようなら。」
そう言って歩きだそうとする広瀬を慌てて止めた。
「えっ、ちょっ……待てよ。」
「へ?」
「一人で帰んのか?」
「そうですけど。」
淡々と答える広瀬に何だか不安になる。
こんな暗い道、一人で帰るなんて危なすぎる。
一人で帰したくない。
「迎えに来てもらえば?遠いだろ、お前ん家。」
「迎えに来てもらうほど遠くないし。」
そう言った彼女の顔が曇ったのがわかった。
「送ってこうか?」
「いえ、そんなわざわざ。本当、大丈夫ですから。」
何をそんなに遠慮してるんだろう?
そう思いながらも、広瀬の辛そうな顔を見るとそれ以上聞けなかった。
「そっか…。気を付けろよ。」
「はい。」
最後にそう言って、広瀬は歩きだした。