しばらくして先生が駆け寄ってくると、広瀬はすぐに保健室に運ばれた。


「先輩…」


目を覚ました広瀬は俺を見てまたあの寂しそうな目をした。


「体、まだダルい?」


俺がそう聞くと、少し黙ってから広瀬は顔をあげて笑った。


「…平気です。」


「何で嘘つく?平気なはずないだろ。38℃だぞ?」


「…じゃあ、何て言えばいいんですか?」


「えっ?」


「“平気”意外に、何て言えばいいんですか?」


広瀬のその言葉に、俺はまたあの痛みを覚える。


「何って…。ダルいとか、辛いとか。いろいろあるじゃん。」


「…言えないです。」


「何で?もっと素直になった方がいいと思うけど。」


「言って……。辛いとか言って、困った顔されるくらいなら言わない方がいい。」


「お母さんのこと?困った顔なんてしないよ。菜々も言ってただろ?看病してくれるって。」


「………」


俺の言葉に、広瀬は諦めたように小さく笑った。


きっとわからないよ…


そう言われているようで辛かった。