こいつ…美沙子の名前出せば俺が動くと思ってるな。

絶対着てやるものか、と思っていたがふとこの間の美沙子の言葉を思い出す。

ー「須藤君の執事姿見てみたかったなぁ」

…上目遣いで言われた美沙子からの遠回しなお願い。

くそっ、そう思いながら俺は素早く着替え始める。

それを見て真純はニヤニヤとしながら、








「美沙子ちゃん喜ぶだろうなー。」

「当たり前だ。美沙子の為に着るんだから。」

「あ、それで執事プレイとか」

「真純、俺と美沙子で変な妄想するならその顔、潰すぞ。」

「冗談だってー。あー、怖い怖い。」








全く思っていないくせに、腕を胸の前でクロスさせ腕をさすって、寒い時にする仕草をする。

そんな真純を無視をし、着替え終わって教室を出た後早足で美沙子のクラスに向かった。

すれ違う人にジロジロと見られる。

執事の格好をした銀髪の黒マスクなんて、目立つ以外の何物でもない。

さっさと美沙子に見せて着替えよう。

そう思っている内に美沙子のクラス前に着くと、人だかりが出来ている。

…随分繁盛してるんだな。

人混みを掻き分け、教室の中を覗いてみると誰かが倒れているのが目に入る。

その倒れている人物が誰か分かった瞬間、俺の頭は真っ白になる。







「邪魔。」








俺は教室にズカズカと入り、倒れている美沙子の傍に行く。

近くには涙目の間宮さんが居て、驚いた顔で俺を見る。

周りは俺の登場でザワザワとし始めたがそんな事は気にしてる場合じゃない。

俺は倒れている美沙子を抱きかかえ、教室を出ようとする。

しかし俺は足を止め、パッと浴衣姿のケバい化粧をした女子グループを見ながら、






「今度美沙子に余計な事したら、タダじゃ済まないから。」








言い終わった後、俺は止めていた足を再び動かし教室を出て保健室に向かう。