夏休み、熱を出した俺を心配して家に来てくれた事は凄く嬉しかった。
怖いはずなのに千尋に向かって堂々と言ってくれた事も嬉しかった。
キスなんてするつもりなかったのに、どうぞ、って覚悟を決めたような声を出してギュッと目を瞑ってる顔が可愛かった。
流石にあんな顔されたら俺も我慢出来なかった。
さっきも、俺の事を好きだと言ってくれた。
美沙子がそんな嘘をつくとは思えない。
でも全部、マスクの下の素顔の為なのかもしれないと思ったら怖かった。
熱を出した時、マスクを外されかけて正直焦った。
見せたらもう終わりなんじゃないかって。
「マスクの下の素顔が知りたかったの。今までありがとう。さようなら。」
そう言われるんじゃないかって。
だから俺は逃げた。
美沙子が必死に何か伝えようとしてくれていた。
でも怖くて聞けなかった。
美沙子の事が好きだから。
本当に自分でも信じられないくらい、彼女の事が好きだから--。