私達が練習しているのは、第1校舎と第2校舎の間にある小さな中庭。
なので、どちらの校舎もここからは廊下が丸見えなのである。
こっち見ないかな…とジーッと廊下を歩いている須藤君を見つめる。
すると、パッとこちらを見た須藤君と目が合う。
つ、通じた…!
嬉しくなり咄嗟に手を振れば、須藤君は手を振り返さなかったものの、少し微笑んだ後、何事もなかったのように歩いて行ってしまった。
…ちょっと遠くて良く見えてないし、マスクもしてるのに、何で私微笑んだって分かるんだろ…。
そう思いながら、どんどん小さくなっていく須藤君の後ろ姿を見ていると、
「本当に付き合ってたんだね。」
「え?あ…うん。」
「いやぁ、噂だけなんだと思ってた。」
ははは、と笑う伊地知君。
やっぱり噂を知ってる人は多いけど、本当に私達が付き合っていると信じている人はあんまり居ないんだな…。
まぁそりゃそうだよね、全く接点が無いわけだし。
はっ!てか、今の光景を見せてしまった…!
バカップルっぽくなかったかな⁉︎
「案外ラブラブなんだね。」
「えっ⁉︎そ、そう?」
「うん。小鳥遊さん、脅されて付き合ってるのかと思ってたから。」
「脅され…⁉︎全然そんなんじゃないから!」
そ、そんな風に周りからは思われていたのか!
どっちかっていうと、付き合ってほしいって言ったの私からだし!
「須藤の事怖くないの?」
「怖くないよ!」
「ははっ、即答だね!」
最初はもう怖かった。殺られると思ってたくらいだし。
でも関われば関わるほど須藤君が良い人だって分かったし、好きだって思えた。
だからきっと、皆須藤君と喋れば怖いなんてイメージ絶対無くなると思う。
まぁ、あの幼馴染が近くに居る時は絶対に危険なんだけども…!